「父の遺言を見たら、自分の取り分が他のきょうだいに比べて極端に少なかった」

「相続財産を調べたら、すでに生前にきょうだいだけが多額の贈与を受けていた」

「遺言執行者の弁護士から書面が届いたが、何をどうしたら良いのか分からない」

──広島の弁護士法人あさかぜ法律事務所には、こうした相続のご相談が広島市・呉市・東広島市・福山市・廿日市市など県内各地から寄せられます。

本ページでは、相続で見落とせない権利「遺留分」と、その侵害があったときに行使できる「遺留分侵害額請求」について、広島で相続案件に取り組む弁護士が要点を解説します。


遺留分とは──民法が遺された家族に保障する最低限の取り分

亡くなった方(被相続人)は、生前贈与や遺言によって、自分の財産を誰にどう分けるかを基本的に自由に決められます(私的自治)。

しかし、その自由を無制約に認めると、配偶者や子・親など被相続人と特に近い関係にあった方の生活が立ち行かなくなるおそれがあります。そこで民法は、一定範囲の相続人に対し、遺産の一定割合を「最低限の取り分」として保障しました。これが遺留分です(民法1042条以下)。

遺留分を侵害する内容の遺言があっても、それだけで遺言が無効になるわけではありません。遺留分を確保したい場合、権利を持つ相続人(遺留分権利者)が、遺留分を侵害している相手方に対して遺留分侵害額請求──侵害額に相当する金銭の支払いを求める請求──を自ら行う必要があります(民法1046条1項)。

【参考】令和元年7月1日施行の改正民法による変更点

改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれ、原則として贈与・遺贈の対象物そのもの(不動産など)の返還を求める権利でした。現行法の「遺留分侵害額請求」では、不動産であっても金銭で侵害額相当額の支払いを求める権利へと整理し直されています。なお、令和元年6月30日以前に開始した相続については、改正前の遺留分減殺請求のルールが適用されます。


こんなときに問題になる──広島で寄せられる典型ケース

広島の事務所にお寄せいただく遺留分のご相談には、次のようなパターンが多く見られます。

  • 親の遺言が見つかったが、自分の取り分が思っていたより極端に少なく、きょうだいとの差にも納得がいかない
  • 相続財産を調べたら、すでに生前にきょうだいだけが多額の贈与(自宅不動産・事業承継・教育資金など)を受けていた
  • 遺言執行者の弁護士から書面が届いたが、対応の仕方が分からない
  • 自分が遺言で多くの財産を受け取ったところ、他の相続人から内容証明郵便で遺留分侵害額請求が届いた。受け取った不動産はすでに売却している
  • 「愛人にすべて遺贈する」「特定の宗教団体に全財産を寄付する」といった遺言がなされ、配偶者・子の生活が脅かされている

このようなケースでは、相続財産の評価・生前贈与の整理・時効管理・相手方の支払能力の確認といった作業を同時並行で進める必要があり、ご自身だけで対応するのは現実的に難しい場面が多くあります。


遺留分を請求できる人──配偶者・子・直系尊属に限られる

遺留分が認められるのは、被相続人の ①配偶者、②子(およびその代襲相続人である孫など)、③直系尊属(父母・祖父母) です(民法1042条1項)。胎児にも、生きて生まれることを条件に遺留分が認められます。認知された非嫡出子も同様に遺留分を有します。

他方、兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪)には遺留分はありません。兄弟姉妹は、配偶者や子・親に比べて被相続人との関係が一般に遠く、生活保障の必要性も相対的に低いと考えられているためです。

そのため、子も親もいない方を兄弟姉妹がお世話してきたケースで、その方が第三者に全財産を遺贈する遺言を遺した場合、兄弟姉妹は基本的に何も相続できないことになります。逆に言えば、兄弟姉妹に確実に財産を残したいのであれば、生前のうちに遺言書を作成しておくことが極めて重要です。

なお、相続放棄をした人・相続欠格に該当する人・推定相続人から廃除された人には、遺留分は認められません。


遺留分の割合──直系尊属のみ「3分の1」、それ以外は「2分の1」

遺留分の総体的割合(相続財産全体に対する遺留分の割合)は、相続人の構成によって次のとおりです(民法1042条1項)。

  • 直系尊属(父母・祖父母)のみが相続人の場合 … 遺留分を算定するための財産の 3分の1
  • それ以外の場合(配偶者・子が相続人に含まれる場合) … 同 2分の1

この総体的遺留分に各相続人の法定相続分を乗じたものが、各人の個別的遺留分になります。

相続人の構成総体的遺留分各相続人の個別的遺留分
配偶者のみ1/2配偶者:1/2
配偶者と子1人1/2配偶者:1/4、子:1/4
配偶者と子2人1/2配偶者:1/4、子:1/8ずつ
配偶者と父母1/2配偶者:1/3、父母:合計1/6(父1/12、母1/12)
配偶者と兄弟姉妹1/2配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし
子のみ1/2子全体で1/2を頭割り
直系尊属のみ1/3直系尊属全体で1/3を頭割り
兄弟姉妹のみなし兄弟姉妹:なし

ご自身のケースで遺留分がいくらになるかは、相続人の構成・基礎財産の額・生前贈与の有無によって大きく変わります。広島の事務所でも、ご相談時に個別に試算をご案内します。


遺留分の対象になる財産──生前贈与・生命保険・祭祀財産の扱い

遺留分を計算する基礎となる財産(遺留分を算定するための財産)は、原則として次の式で計算します(民法1043条1項)。

被相続人が相続開始時に有していた財産(遺贈分を含む) + 一定の生前贈与財産 - 相続債務

加算される生前贈与の範囲は、誰への贈与かで違います(民法1044条)。

  • 相続人以外への贈与:相続開始前1年以内にされたものが原則として算入対象
  • 相続人への贈与:相続開始前10年以内にされたもののうち、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としてされた贈与(特別受益にあたるもの)が対象
  • 上記の期間より前の贈与であっても、贈与者・受贈者の双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってした贈与は、期間の制限なく算入の対象になります(民法1044条1項後段)。

生命保険金は原則として遺留分算定の対象外

死亡保険金(生命保険金)は、保険契約に基づき受取人固有の権利として支払われるものであり、原則として被相続人の相続財産にはあたらず、遺留分算定の基礎財産にも含まれません。

ただし、保険金額が遺産総額に対して著しく大きいなど、相続人間の公平を著しく害すると評価される特段の事情がある場合には、例外的に基礎財産に持ち戻して計算されることがあります(最高裁平成16年10月29日判決)。

祭祀財産・一身専属権は対象外

お墓・仏壇・位牌などの祭祀に関する財産は、相続による承継の対象から外され(民法897条)、遺留分算定の対象にもなりません。被相続人の一身に専属する権利(雇用契約上の使用者・被用者の地位など)も同様です。

財産の評価時点は「相続開始時」

不動産や非上場株式など、時間の経過により価値が変動する財産は、相続開始時(被相続人の死亡時)の価額で評価します。生前に贈与された財産を受贈者がすでに第三者に売却していた場合でも、売却代金そのものではなく、改めて相続開始時点を基準として評価することになります。

広島の遺産では、自宅不動産・事業用不動産・同族会社の株式が遺産の中心になっているケースが少なくなく、ここの評価が最大の争点になることもしばしばです。


請求の進め方──話し合い・内容証明・調停・訴訟

遺留分侵害額請求は、感情的な対立が表面化しやすい紛争です。広島家庭裁判所・広島地方裁判所での運用を踏まえても、いきなり訴訟にもち込むのではなく、段階的に進めるのが基本です。

ステップ1 相続人間での話し合い(協議)

進め方の基本は、次の流れになります。

  1. 整理する——被相続人の財産、遺言、生前贈与の内容を洗い出す
  2. 話し合う——整理した事実をもとに、相続人間で協議する
  3. 書面に残す——合意できたら必ず合意書化する(事案によっては公正証書)

口約束のままにしておくと、後から「言った/言わない」の争いになりがちです。そうなると解決までの時間も費用も大きく膨らみます。最後の書面化までを必ずワンセットで行うことが、結局いちばんの近道です。

ステップ2 内容証明郵便による意思表示

話し合いが難しい場合、または消滅時効が迫っている場合には、配達証明付きの内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示を相手方に通知します。これにより「いつ・誰が・どのような請求をしたか」が公的に記録され、後の紛争での重要な証拠になります。遺言執行者がいる場合には、遺言執行者にも併せて通知することが一般的です。

内容証明郵便には、差出人・受取人の氏名住所、被相続人の氏名・死亡日、遺留分権利者であることの説明、請求金額(または請求の意思表示)、支払期限などを記載します。

ステップ3 家庭裁判所での調停(調停前置主義)

内容証明郵便でも解決しないときは、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者の合意で定めた家庭裁判所)に、遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。広島市内のご相談者でも、相手方が県外に住んでいる場合には、相手方住所地の家庭裁判所に申立てを行うことになります。

遺留分侵害額請求は、家事事件手続法257条1項により調停前置主義が適用される事件です。原則として、訴訟の前にまず調停を試みる必要があります。

調停では、調停委員が当事者双方の言い分を交互に聞き、解決案や助言を提示しながら合意形成を目指します。なお、調停の申立てだけでは、相手方に対する遺留分の権利行使の意思表示にはなりません。意思表示は、調停の申立てとは別に、内容証明郵便等で必ず行っておく必要があります。

ステップ4 地方裁判所での訴訟

調停でも合意に至らない場合、調停は不成立となり審判には自動的に移行しません。改めて地方裁判所(請求額140万円以下なら簡易裁判所)に訴訟を提起する必要があります。

遺留分侵害額請求は金銭債権ですので、義務履行地である債権者(請求する側)の住所地を管轄する裁判所に提訴することができます。広島市内のご相談者であれば、広島地方裁判所での提訴が選択肢となるケースが多くあります。

訴訟では、遺産の範囲・評価額・生前贈与の事実・特別受益該当性・時効など、多くの争点が並行して審理されます。不動産鑑定や尋問など、相応の準備と時間(半年〜1年超)を要するのが一般的です。


消滅時効──「1年」と「10年」の二重の壁

遺留分侵害額請求権には、特に短い期間制限が設けられています(民法1048条)。

  • 相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年
  • 相続の開始から10年

最高裁の判例上、ここでいう「贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、贈与・遺贈の事実を知っただけでは足りず、それが自分の遺留分を侵害するものであることを知った時を意味するとされています(最判昭和57年11月12日参照)。とはいえ、相続後の慌ただしい時期に1年は本当にあっという間に過ぎてしまいます。数ある消滅時効の中でも特に短く設定されていますので、ご注意ください。

なお、内容証明郵便で請求の意思表示をすると、消滅時効の完成が6か月猶予され(民法150条1項)、この期間内に協議または提訴をするかどうかを判断することになります。意思表示によりいったん発生した遺留分侵害額の金銭債権は、別途5年の消滅時効にかかります(民法166条1項1号)ので、最初の意思表示後も油断は禁物です。

【実務上のおすすめ】

「遺言の内容に違和感がある」と気づかれたら、できれば3か月以内、遅くとも半年以内に弁護士にご相談されることをお勧めします。財産内容の調査・遺留分の試算・内容証明送付までを余裕をもって行うためには、これくらいの時間軸が必要だからです。


遺留分侵害額請求を受けた方へ──冷静に対応するための要点

「他の相続人から、突然内容証明郵便で遺留分侵害額請求が届いた」「弁護士名で請求書面が届いた」──こうしたとき、慌てて全額を支払ってしまったり、逆に放置してしまったりするのは、どちらも危険です。

まず確認すべきは、次のようなポイントです。

  • 遺留分侵害がそもそも本当にあるのか(基礎財産の計算が正しいか)
  • 相手方の計算方法が法的に正しいか(生前贈与の取扱い・不動産評価額など)
  • 時効・期間制限による消滅の可能性はないか
  • ご自身が受けた贈与等がどう影響するか
  • 一括払いが難しい場合、分割や代償物による支払いの余地はあるか

遺留分侵害額請求権は法律で保障された権利ですので、無視を続けると最終的には調停・訴訟を経て強制執行(給与・預貯金の差押え)に至るおそれがあります。一方で、相手方の計算をそのまま受け入れる必要はなく、適切な反論・減額交渉により金額が変わるケースも珍しくありません

請求された側のお立場でも、当事務所ではご相談を承っています。請求する側・された側、どちらでも安心してご連絡ください。


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