「もめる家族ではないから、遺言書は自分で書けば十分」
そうおっしゃる方は少なくありません。実際、自筆の遺言書は費用をかけずご自身だけで作成できますし、ご家族の関係が良好であれば、それで問題なく済むことも多くあります。
ただ、私たちが相続の紛争としてご相談を受ける事案の中には、遺言書があったからこそ起きたものが一定数含まれています。多くは、書いた方に落ち度があったというより、前提のところで思い違いがあったケースです。
ここでは、自筆で書き始める前に確認していただきたい点を3つに絞ってご説明します。
1 ご自身の相続人が誰なのか、正確にご存じですか
意外に思われるかもしれませんが、ここを取り違えたまま書き始める方が最も多い印象です。
とくに、お子さまがいらっしゃらない場合です。ご両親のいずれかがご存命であれば、法律上の相続人はご両親であり、ご兄弟は相続人になりません。ご兄弟が相続人となるのは、ご両親が既にお亡くなりの場合に限られます。
「兄と自分が相続人だと思っていた」という前提で書かれた遺言書は、遺留分の見込みも、相続税の基礎控除の計算も、すべてずれてしまいます。基礎控除は法定相続人の数によって決まりますから、控除枠が想定より小さかった、ということも起こり得ます。
まずはご自身の相続人が誰なのかを確定させる。遺言書を書く作業は、そこからです。
2 書いた遺言書を、どこに保管しますか
自宅の金庫にしまう、信頼できるご家族に預ける。いずれも可能ですが、おすすめはできません。
ご自身で保管された遺言書は、亡くなった後、家庭裁判所で検認という手続を経る必要があります。相続人全員の戸籍謄本を集めなければならず、完了までに1か月から数か月かかります。この手続を経ずに開封してしまうと、5万円以下の過料の対象にもなります。
さらに、預かった方が他のご親族から「内容を書き換えたのではないか」と疑われ、そこから関係が壊れていく例もあります。
公証役場や弁護士は敷居が高い、とお感じであれば、法務局の自筆証書遺言書保管制度をご検討ください。手数料は1件3,900円、検認は不要になります。ご自身で書いた遺言書を、公的機関に預かってもらえる制度です。
3 財産を渡したい相手が、先に亡くなったらどうなりますか
これは見落とされがちな点です。
遺言書で財産を渡すと決めた相手が、ご自身より先に亡くなられた場合、その部分は効力を生じません。その方のお子さまに自動的に引き継がれるわけでもありません。行き場を失った財産は、遺言がなかったものとして扱われ、法定相続人が取得することになります。
ご高齢の方や、ご自身と年齢の近い方を指定される場合は、「もし○○が先に死亡していたときは△△に」という予備的な条項を必ず入れておいてください。一文入れておくかどうかで、結果が大きく変わります。
より詳しい解説はこちら
このほか、財産の書き方、遺留分、遺言執行者、相続税の注意点などについては、広島駅前事務所のサイトで11の質問にお答えする形でまとめております。
遺言書のよくあるご質問|自筆で書き始める前に確認したい11のこと
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。


