ある日突然、弁護士や信託銀行、親族などから「遺言執行者に就任しました」という通知が届くことがあります。
通知書と一緒に、遺言書の写しや財産目録、署名・押印を求める書類が入っていることもあります。
「早く返送しなければならないのではないか」
「この書類に実印を押して大丈夫なのか」
「遺言の内容に納得できないが、もう何も言えないのか」
このように戸惑う方は少なくありません。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続を行う人です。
任務を開始した場合には、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
ただし、通知が届いたからといって、内容を確認しないまま署名や押印をする必要はありません。
まずは届いた書類の意味を確認し、自分にどのような権利があり、どの期限に注意すべきかを整理することが大切です。
このページでは、遺言執行者から実際に通知や書類が届いた方が、署名・返送する前に確認しておきたいことを順番に解説します。
📞 電話で無料相談のご予約082-207-0720 (タップで発信)
遺言執行者から通知が届いたら、内容を確認するまで署名・返送を急がないでください
まず封筒と届いた書類をすべて保管する
通知が届いたら、まず封筒を含めて書類一式を保管してください。
通知書だけでなく、遺言書の写し、財産目録、返信用紙など、同封されていたものをまとめて残しておきます。
封筒の消印や通知書の日付も、後から「いつ通知を受け取ったか」を確認する資料になることがあります。
受け取った日が分かるよう、別にメモを残しておくのもよいでしょう。
署名・押印を求められていても、書類の意味を先に確認する
同封された書類に署名欄や押印欄があるからといって、すぐに記入する必要があるとは限りません。
単に通知を受け取ったことを確認する書類なのか、遺言の内容への同意まで求める書類なのかによって意味が違います。
特に、実印の押印や印鑑証明書の提出を求められている場合には、何のために必要な書類なのかを確認してから対応します。
通知そのものは放置せず、自分の権利と期限を確認する
一方で、「署名を急がない」ということは、「通知を放置してよい」という意味ではありません。
遺言の内容によっては、遺留分侵害額請求などの期間制限が問題になることがあります。
また、財産目録から初めて借金の存在を知るケースもあります。
届いた書類はそのままにせず、内容を確認し、必要な対応を整理してください。
まず遺言執行者・遺言書・財産目録の3点を確認します
誰が遺言執行者になっているのか
最初に、通知を送ってきた人が誰なのかを確認します。
遺言執行者は、遺言書の中で指定されている場合があります。
遺言で指定された人が就任しない場合などには、家庭裁判所によって選任されることもあります。
弁護士や司法書士、信託銀行などが遺言執行者になる場合もあれば、相続人や親族の一人が就任する場合もあります。
通知書の差出人と、遺言書に記載された遺言執行者を照らし合わせて確認してください。
遺言で誰がどの財産を取得することになっているのか
次に、遺言書の内容を確認します。
通知書の説明だけではなく、可能であれば遺言書そのものを確認してください。
「すべての財産を長男に相続させる」といった内容の場合もあれば、「自宅は長男、預貯金は妻」というように財産ごとに取得者が定められている場合もあります。
自分が何を取得することになっているのか、あるいは自分について何も書かれていないのかを確認します。
遺言が公正証書遺言なのか、自筆証書遺言なのかも確認しておくとよいでしょう。
公正証書遺言と法務局で保管されていた自筆証書遺言では、家庭裁判所の検認は不要です。
一方、自宅などで保管されていた自筆証書遺言については、原則として検認が必要になります。
遺言書の内容と財産目録を確認する
遺言執行者には、相続財産の目録を作成して相続人に交付する義務があります。
通知と同時に財産目録が届くこともあれば、後日送付されることもあります。
財産目録が見当たらない場合には、通知書に今後の送付予定が記載されていないか確認してください。
財産の全体像が分からなければ、遺言による自分の取り分が適切か、遺留分が侵害されているかを判断することも難しくなります。
📞 電話で無料相談のご予約082-207-0720 (タップで発信)
返送を求められた書類は、内容によって対応が違います
ここは、遺言執行者から通知が届いたときに特に確認していただきたい部分です。
「署名してください」「押印してください」と書かれていても、すべての書類が同じ意味を持つわけではありません。
単なる受領確認のための書類
遺言執行者から届く書類の中には、通知書や遺言書の写しを受け取ったことだけを確認する受領書があります。
本当に受領確認だけであれば、返送によって遺言の内容そのものに同意したことになるとは通常考えにくいでしょう。
ただし、書面のタイトルだけで判断しないでください。
本文に「遺言の内容について異議はありません」「内容を承諾します」などの文言が入っていないかまで確認します。
遺言の内容への同意・承諾を求める書類
「同意書」「承諾書」と書かれた書類が入っている場合には、より慎重な確認が必要です。
遺言執行者が遺言の内容を実現するために、相続人の同意が常に必要になるわけではありません。
それでも同意書や承諾書への署名を求められているのであれば、なぜその書類が必要なのかを確認します。
署名することで何を認めることになるのか分からない場合には、内容が確認できるまで署名を急ぐ必要はありません。
遺産分割協議書や相続分に関する書類
遺言がある場合でも、事情によっては遺産分割協議書や相続分に関係する書面への署名を求められることがあります。
遺産分割協議書に署名・押印すれば、その内容で遺産を分けることに同意したことになります。
自分が取得する財産や、負担する債務、権利の放棄や譲渡について記載されていないかを確認してください。
内容を十分に理解しないまま署名することは避けた方がよいでしょう。
実印・印鑑証明書を求められた場合
実印の押印と印鑑証明書の提出を求められる場合もあります。
印鑑証明書の提出自体に問題があるわけではありません。
ただし、どの書類に実印を押し、その印鑑証明書が何の手続に使われるのかを確認する必要があります。
「相続手続に必要だから」と言われただけで提出するのではなく、書類の内容まで確認してから対応してください。
財産目録が届いたら「抜け」と「評価」を確認します
心当たりの財産が記載されているか
財産目録では、まず被相続人が所有していたと思われる財産が記載されているかを確認します。
預貯金、不動産、株式や投資信託など、把握していた財産と目録の内容を照らし合わせてください。
心当たりのある財産が記載されていない場合には、なぜ記載されていないのかを確認する必要があります。
もっとも、目録にないというだけで、直ちに財産隠しがあったと判断できるわけではありません。
必要に応じて、預貯金の取引履歴や不動産の登記事項などを確認します。
不動産や株式などの評価額に根拠があるか
財産目録に金額が記載されていても、その数字だけで判断しないことも大切です。
特に不動産には、固定資産税評価額、相続税評価額、実際の取引価格など、複数の評価方法があります。
株式も、基準とする日や評価方法によって金額が変わることがあります。
そのため、財産目録に記載された金額が、そのまま遺留分を計算する際の評価額になるとは限りません。
評価方法によって結論が変わりそうな場合には、どのような基準で金額が記載されているかを確認してください。
📞 電話で無料相談のご予約082-207-0720 (タップで発信)
遺言の内容に納得できない場合は、遺留分を確認します
遺言が有効でも遺留分を請求できる場合がある
遺言書に「すべての財産を長男に相続させる」と書かれている場合でも、それだけで他の相続人の権利がすべてなくなるとは限りません。
一定の相続人には、遺留分という最低限の取り分が法律上保障されています。
遺言そのものが有効であっても、自分の遺留分が侵害されていれば、多くの財産を取得した人に対して不足分に相当する金銭を請求できる場合があります。
これが遺留分侵害額請求です。
詳しい計算方法については、遺留分の専用ページで解説します。
兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がない
遺留分が認められているのは、配偶者、子やその代襲相続人、直系尊属です。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
また、亡くなった兄弟姉妹を代襲して相続人となった甥・姪にも遺留分は認められていません。
そのため、兄弟姉妹や甥・姪が相続人となっているケースでは、遺言が有効であれば、遺留分を理由として財産を請求することはできません。
遺留分の金額は財産全体を確認して判断する
遺留分が侵害されているかどうかは、遺言書だけを見ても判断できないことがあります。
預貯金や不動産などの財産の価額に加え、一定の生前贈与や債務なども関係するためです。
特に不動産が含まれる場合には、評価方法によって遺留分の金額が大きく変わることがあります。
まずは財産全体を把握した上で、自分の遺留分がどの程度になるのかを確認します。
遺言書そのものに疑問がある場合は、遺留分とは分けて考えます
遺言能力や遺言書の方式に疑問がある場合
「内容が自分に不利だから」という理由だけで、遺言が無効になるわけではありません。
一方で、遺言を作成した時点で遺言者に内容を理解して判断する能力がなかった疑いがある場合や、自筆証書遺言の方式に問題がある場合などには、遺言そのものの有効性が問題になることがあります。
遺言者の当時の病状や医療・介護記録、遺言書の作成経緯などを確認する必要があります。
「遺言が無効」と「遺留分が侵害されている」は別の問題
遺言無効と遺留分侵害額請求は、別の問題です。
遺言無効は、そもそもその遺言に法的効力があるのかを問題にします。
これに対して遺留分侵害額請求は、遺言が有効であることを前提としても、自分に保障された最低限の取り分が侵害されている場合に行う請求です。
遺言の内容に納得できない場合には、どちらの問題なのかを切り分けて検討する必要があります。
期限は「通知が届いた日」だけで判断しません
遺留分侵害額請求には1年と10年の期間制限がある
遺留分侵害額請求には期間制限があります。
相続の開始と、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間、請求権を行使しないと時効によって消滅します。
また、これらを知らなくても、相続開始から10年を経過すると請求できなくなります。
ここで注意したいのは、必ずしも「遺言執行者から通知が届いた日から1年」ではないことです。
通知が届く前に遺言の存在と内容を知っていた場合などには、それ以前から期間が進んでいる可能性があります。
遺留分侵害額請求を検討する場合には、この1年以内に請求の意思表示をする必要があります。
借金が分かった場合は相続放棄の期限も確認する
遺言執行者から届いた書類や財産目録によって、初めて被相続人の借金を知る場合があります。
相続放棄は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
ただし、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由があるなどの事情がある場合には、熟慮期間の起算点について別の判断がされることがあります。
「通知で初めて借金を知ったから、そこから必ず3か月ある」と決めつけず、個別の事情を確認する必要があります。
【内部リンク:相続放棄の熟慮期間】
「いつ・何を知ったか」を時系列で整理する
期限を確認するときは、日付を時系列で整理してください。
被相続人が亡くなった日だけでは足りません。
遺言の存在を知った日、遺言の内容を知った日、遺言執行者から通知が届いた日、財産目録を受け取った日、借金を知った日などを整理します。
通知書、封筒、メールなど、日付が分かる資料も残しておいてください。
「いつ・何を知ったのか」は、遺留分や相続放棄の期限を判断する際に大切な資料になります。
弁護士に相談するときは、届いた書類をそのままお持ちください
遺言執行者から通知が届き、内容や対応方法に迷った場合には、書類を整理しすぎず、届いた状態のまま相談時にお持ちください。
相談時には、次の資料があると状況を確認しやすくなります。
- 遺言執行者から届いた通知書と封筒
- 遺言書の写し
- 財産目録
- 署名・押印を求められている書類
- 印鑑証明書などの提出を求められている書類
- 遺言執行者や他の相続人とのメール・手紙・LINEなどのやり取り
すべてそろっていなくても相談はできます。
特に、まだ署名していない書類がある場合には、記入せずそのままお持ちください。
すでに署名・押印して返送している場合でも、それだけで対応できなくなるとは限りません。
手元にコピーがあれば持参し、いつ、どのような方法で返送したのかもお伝えください。
📞 電話で無料相談のご予約082-207-0720 (タップで発信)
広島で法律相談をお考えの方へ|弁護士法人あさかぜ法律事務所・広島駅前事務所

相続・交通事故・債務に関するご相談は、初回無料・時間無制限で承っております。
「誰に相談すればいいか分からない」「まずは話だけでも聞いてほしい」という方こそ、どうぞ安心してご相談ください。時間を気にせず、抱えているご不安をゆっくりとお話しいただけます。弁護士がじっくりと事情を伺い、今後の見通しや解決への道すじを分かりやすくご案内いたします。
お電話:082-207-0720(平日・土日祝 9:00〜21:00 受付)
LINE・メール:24時間受付(スマートフォンからいつでもご連絡いただけます)
お急ぎの場合はお電話がスムーズです。フォーム送信後しばらく経っても連絡がない場合は、お手数ですがお電話にてお問い合わせください。
▶ ご相談・お問い合わせはこちら

